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COLUMN

「お返し」こそ自分で選ぶべき、という話。

ホワイトデーは「何をあげるか」が難しい。基本的にはキャンディなりマシュマロをお返しにする、という文化だと聞くけれど、バレンタインのチョコレートに比べるといまいち定着していないし、むしろ最初から「お返しは何でもいいのだ」みたいな風潮も感じる。なんとなくイベントとして「雑」という印象だ。だから自分は食事をご馳走したり、ちょっとした雑貨を渡す、みたいなごまかしかたをしてきた気がする。「お返し」という行為のバランスが難しいのだ。どのくらいが「お返し」として適切なのか。それは最初のホワイトデー体験が影響しているかもしれない。

幼稚園の頃、同じ教室の女の子にバレンタインチョコをもらった。ミッキーマウスの顔をかたどったチョコ。その子とは2〜3回くらい遊んだことがある、という程度で、そもそも「バレンタインデー」というイベント自体まったく知らなかった。不思議に思ってチョコレートをもらった、と母親に言うと、「それはバレンタインチョコだよ! 見せて見せて!」とテンションぶち上がりで言う。息子が女の子からチョコレートをもらった、ということに喜びがあったのか、そういう年齢になったんだ、という感慨があったのか。好きな人にあげるものなんだよ、○○ちゃんは直角のことが好きなんだよ、と説明を受けたが、5歳の自分にはあまりピンとこなかった。

「来月、お返しをあげなきゃいけない」と言われたのも、子供心にめちゃめちゃ負荷がかかった。何を返せばいいのかまったくわからないし、「買ってくる」という発想も出てこなかった。そもそもお金なんて持っていない。困っていると、母親が用意してくれるという。

3月14日にその子の家に行き、母親に渡された15センチ程度の長方形の箱を、「これ、お返し」と中身も確認しないまま渡した。その子がその場で箱を開けると、瞬間、彼女の顔色が変わった。

中に、アクセサリーがギッシリ詰まっていたのだ。

オモチャではない。金属製のブローチや割としっかりした作りのネックレス、指輪はなかった記憶だが、確実に「大人用のソレ」が箱いっぱいに入っていて(5歳だったからそう見えただけで、そんなに高いものではなかっただろうけど)、パッと見の「金銀財宝」感がエグかった。

もらったのはミッキーマウスのチョコである。駄菓子屋さんで100円くらいで買えるメジャーなやつだ。それに対してこんな過剰な、フルパワーでお返ししてきたのだから、向こうも相当驚いただろう。彼女のお母さんも「すごーい!」と歓声をあげていたし(相当なキザ野郎に見えたハズ)、彼女が僕を、まるで王子さまを見るような目になったのをよく覚えている。

一方、僕はドン引きしていた。5歳の心にも「母親よ、これはやりすぎではないか……?」と思ったのだ。明らかにお返しとして対価がつり合ってないし、相手のリアクションも異常だ。何も考えず、母親に言われるがまま渡してしまったぶん、申し訳なさも感じていた。

それに加えて、そもそもその子のことを「好き」だという感情を持って接していたとは、正直言いがたい。記憶があやふやではあるのだが、当時「これはまいったぞ」という気持ちになった記憶の方が強い。

自分としては、チョコをもらったことによる形式的なお返しのイベントでしかなかったのに、何だか生涯の契りを交わしたような、オオゴトのテンションになってしまっている。彼女には何度も何度も「嬉しい、ありがとう」と言われ、彼女のお母さんも、「将来、直角くんのお嫁さんになろうね!」とまで言いだした。

5歳の心に、「あ、オレ、今、勝手に決められたレールの上を走り出してる」みたいな気持ちになった。「え? オレ、この子と結婚するの?」と。誰にも縛られたくないと、逃げ込んだこの夜。尾崎豊より10年早い、「5の夜」だった(昼だけど)。

そのあと、その子との記憶はほとんどない。向こうがもう、こちらに興味をなくしたのか、僕が何かしらつれない態度を取って距離を置いてしまったのか。次の年のチョコはもらえなかったはずだ。この経験から、僕も母親にすべてを丸投げするのは危険だ、という認識を持った。それ以降、母親に丸投げでお願いしたのは確定申告くらいである。

プレゼントのセレクトはやはり、第三者の意見を入れない方がいい。何をあげたら良いのか皆目わからなくても、考えに考え抜いた自分の答えのほうが、失敗しても誰かのせいにしなくて済むし、予期していない方向に進む可能性は低い。貴重な経験値にもなる。

……と、ここまで書いて思い出したけど、自分も大人になってプレゼントするとき、明らかに対価をオーバーしているものを過剰にあげて、相手を恐縮させたり、ドン引きされてしまったことが何度かあった。単純に血筋なのかもしれない……。

渋谷直角(しぶや・ちょっかく)

1975年、東京都練馬区生まれ。1990年代にマガジンハウスで『relax』のライターをしながら、漫画も描き始める。主な作品に、『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』、『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』などがある。2019年、『デザイナー渋井直人の休日』がTVドラマ化され話題に。最新コミックスは、『さよならアメリカ』、『続・デザイナー渋井直人の休日』。現在『yomyom』で「パルコにお店を出したくて」を連載中。https://www.shibuyachokkaku.com/

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