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COLUMN

ちょうどいい感謝

演劇のカーテンコールが好きだ。舞台と客席で隔てられた俳優と観客が、最後の最後にほんのちょっとだけ交わすコミュニケーションは美しい。だけど、ダブルってやつは苦手だ。カーテンコールを終えて、俳優がはけたあとでもう一度カーテンコールするやるやつ。いや、ダブルは全然いいし嬉しいことも多いんだけど、さらに3回目、4回目と延々に続く公演なんかをみにいくと、拍手しながら観劇の余韻が台無しになってしまうことがある。あと、スタンディングオベーションも苦手。立ち上がるなら内から湧き出る熱き想いに付き従って能動的に立ちたいのだけど、だいたいいつも「みんな立ってるし」という消極的な気持ちで立ち上がってしまう。かたくなに立ち上がらないときもあるけど、なんか立たないと立たないで「つまんなかったやつ」みたいになってしまって気まずい。そんなときは「別につまんなかったわけではなくて、しっかり感動したんだけど、ただ立ち上がるほどではないんだ!」と謎の言い訳を心で唱えつつ拍手をしている。感謝の気持ちを過不足なく表現するのって難しい。

感謝の気持ちをまるごと「ありがとう」に込めて伝えることができない。不意打ちでプレゼントをもらうと、恐縮してしまったり照れくさくなってしまったりして、目を泳がせながら「ありがとう、ございます」っていってしまう。喜びに「ございます」をかぶせておさえつけてしまう。もっとしっかり嬉しいのに、その嬉しさを相手に渡すことができない。こないだ友人に絵本をプレゼントしたとき、友人は絵本の表紙をじっとみつめながらつぶやくように「ありがとう」といってくれた。言葉が勝手にこぼれてくるみたいな言い方だった。あんな風に素直な「ありがとう」をいつか僕も言えるようになるんだろうか。感謝はきっとこぼれおちるもので、そのとき「ありがとう」は自分の言葉ですらなくなっている。自分をこえてこぼれた感謝は、いつもすくいとるように相手に届く。

三浦直之(みうら・なおゆき)

ロロ主宰。劇作家。演出家。「家族」や「恋人」など既存の関係性を問い直し、異質な存在の「ボーイ・ミーツ・ガール=出会い」を描く作品をつくり続けている。古今東西のポップカルチャーを無数に引用しながらつくり出される世界は破天荒ながらもエモーショナルであり、演劇ファンのみならずジャンルを超えて老若男女から支持されている。『ハンサムな大悟』で第60回岸田國士戯曲賞最終候補作品ノミネート。2019年脚本を提供したNHKよるドラ『腐女子、うっかりゲイに告(コク)る。』で第16回コンフィデンスアワード・ドラマ賞脚本賞を受賞。現在、ビデオ電話で交流する人々を描く連作短編通話劇シリーズ『窓辺』を、期間限定でYoutube生配信中。
撮影:三上ナツコ

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