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- Ruka Kashiwagi
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- Yoshiko Kurata
池袋パルコとの思い出
池袋PARCO 本館M2F「HIS The ROOM of journey IKEBUKURO」にて、長谷川ミラ氏がMCを務めるJ-WAVE「START LINE」とのタイアップによる公開収録イベントが実施された。イベント開始前からまだかまだかとワクワクする多くのファンたちの目の前に現れたのが、木村カエラ氏。今年夏には「SHIBUYA PARCO × KAELA KIMURA 20th ANNIVERSARY SPECIAL LIVE」に出演したばかりだ。彼女が出演した広告含め、2001年以来 数々のパルコの広告制作に携わってきたクリエイティブディレクターの箭内道彦氏、そして長年広告制作携わっているパルコ宣伝部の草刈洋氏を迎え、アットホームな雰囲気でこれまでの広告の軌跡をたどる。
まずは、今年30周年を迎える池袋「P’ PARCO」の94年オープン時のCMを上映。同年にリリースしたスチャダラパーによる名曲『今夜はブキーバック』をBGMに本人たちと小沢健二氏が出演した豪華CMとなった。まだ小学生で覚えていないというカエラ氏に対して「当時は、まさに『渋谷系』という言葉が生まれたくらいの年で、いわゆる音楽ファンがリスナーではなくプレイヤーとして楽曲制作・リリースしていった時代。そこからスチャダラパーも小沢さんも生まれました。とにかく90年代の渋谷はすごく特殊で、ギネスに載るくらい何店舗もレコード屋があって音楽に熱があった街でしたね」と当時の時代背景を草刈氏は振り返る。
カエラ氏とパルコの接点は、高校生の頃から。「憧れの場所でしたね。パルコにとって一号店ということもあって渋めなイメージを感じつつも、駅から少し奥まってるから特別感もありました。やっぱりヒステリックグラマーなど自分が好きなブランドが入ってたので、アルバイトで貯めたお金を握りしめて、学校から池袋パルコまで自転車で30分毎日こいできた思い出があります」と当時の思い出を笑顔で語った。
05年のPARCO SAYS制作の裏側
そんなゆかりのあるパルコの広告にカエラ氏がはじめて出演したのは、2005年に箭内道彦氏が手がけた「PARCO SAYS」だった。「ギターを持って叫んでいるピンクコート、刈り上げのカエラちゃんはパルコ×カエラちゃんで一番にパッと思い浮かぶくらい衝撃だった」とリスナーからもコメントがある通り、「強くて鈍感、弱くて繊細」「大丈夫、そのまままっすぐまっすぐ」などさまざまな吹き出しに書かれた言葉の数々には、いま見ても共感できる感情が表現されている。
「直訳すると『パルコが言います』という意味なんですけど、ただ単なる無機的な建物ではなく、みんなのそばにいて色々話しかける、パルコはそんな場所であってほしいなという思いをこめて制作しました。ちなみに『PARCO SAYS』は、リリー・フランキーさんに手書きしてもらったんです。周りにある吹き出しは、カエラちゃん本人が言ってそうだなと思える言葉を考えたけど、たしか最後はカエラちゃんとも相談して決めていったよね?」という箭内氏に対して、カエラ氏は「そうですね。いま振り返ってみるとすごい生意気な態度だったかもしれないけど、素直に自分だったらこう言うかなという話をした記憶があります。いま見ても素敵な言葉がいっぱいですよね」と話し、辻川幸一郎氏のディレクションで制作した同時期のCMを上映。いまと変わらず無邪気な表情のカエラ氏に思わず観客から「かわいい」という歓声があがるなか、「原付バイクに乗ってトンネルを駆け抜けるCMも撮りました。色々なカットに合わせて何度も原付バイクに乗りながらの撮影だったから、すごくドキドキした撮影だったのを覚えています。」と撮影の裏側を語った。
常にコアを持って未来に前進する姿勢
その後、2016年に渋谷パルコのリニューアルオープンに向けて一時休業する際に制作した広告「Last Dance_」も紹介。パルコと縁があるアーティストが出演したことで話題となり、「PARCO SAYS」とはまた違ったカエラ氏の大人の表情が見える。「実はこの撮影は、CGじゃなくて一発撮りなんです」という箭内氏に対して、カエラ氏も驚きの表情で「そうですね。でも、これが撮れた瞬間にこれだってなったことはすごく覚えています。」と当時のことを思い返した。
「Last Dance_」に込めた想いを草刈氏はこう振り返る。「商業施設は一時閉店する時って普通は閉店セールをやるはずなんですけど、また戻ってくるよという意味で大々的なキャンペーンを打ち出しました。いっぺん終わるけど、しみったれた感じというよりもみんなで楽しく踊って幕を閉じて、また幕があがると新たな形で帰ってくる。そんな幕間のようなコンセプトで制作しました。あくまでも過去じゃなくて、未来を感じさせるというか」。
都市開発が進む中、渋谷パルコが一時閉店することに一段と寂しさを覚えたという長谷川ミラ氏。2022年には池袋パルコの広告キャンペーン「THINK to a Sustainable fashion」に出演するなど公私ともにパルコには深い思い出があるのだという。今回のトークを通して、コアを軸に時代ごとにアップデートするパルコの姿勢にも、クリエイターの2人の活動にも改めてリスペクトを向ける。デビューから今年で20年を迎えるカエラ氏に、クリエイションにおいて大切にしてきたことを尋ねると、まっすぐな答えが返ってきた。
「デビュー当時から、時代に流されないというコアは決めていますね。自分の好き、良いと感じたものを信じて作る。それはずっと最初からブレてないです」
ほかにもさまざまなジャンルの若い才能が出演する、箭内氏による広告「SPECIAL IN YOU」を紹介。最新の「SPECIAL IN YOU」ではVTuber「星街すいせい」が登場するなど常に時代の最先端を突き進むパルコの姿勢は、草刈氏いわく「創業以来、新しい才能だけではなく、テクノロジーもフックアップすることを試みています。よくすごい人使ってるね、と言われることもあるんですが、パルコとしては素直にこれからの才能を表現したいという未来への気持ちで続けているんです」という。
長年そばで見ている箭内氏は「パルコがやってることって一切古くならない。普遍と最先端を同時に描いている稀有な存在ですよね。若い才能を育てるインキュベーションとしても機能していると思う。もしみんなで集まろうって言ったら、今日みたいに気軽に集まれる公園みたいな場所ですよね。というか草刈さんは、公園の管理人?!」と笑顔で語り、頷きながら草刈氏も「公園は誰が集まるかが大事。魅力的な人が集まれば、自然と魅力的な場所であり続けられるんだと思います。それは広告に出演する方々だけではなく、来てくださる皆さんを含めてということ。これからも皆さんそれぞれのお気に入りのパルコを見つけていただけると嬉しいです」とトークを締め括った。