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父からもっとも遠い父

 アタシの父親はとにかくだらしがなくて、遊ぶことが好きすぎてときおり(いや頻繁に)意識が遠のいて、時間が守れなくて、お金という概念も持っていなくて、気付いたら真夜中を超えて朝を超えて昼前にデロデロの状態で帰ってくる。そのせいでよく周りに迷惑をかけて怒られてばかりなんだけど、信じられないくらいの人懐こさと義理人情と、そして何よりも正直でわかりやすい性格をしているため、なぜか色んな人が何かをプレゼントしたいと思わせる謎の吸引力を持っている。

 「女におごった酒は返ってこないけど、男におごった酒は返ってくる」とか言いながら女の子にばかりデレデレしながら声をかけたり、新しいクラブが出来ては出向いてスピーカーの音質をチェックしたり、客層を見たりしてあーだこーだ言ってる音楽好きな(そして何よりも夜遊びと人が好きな)アタシの父は、一般の父親像からはとにかく遠く離れているせいで父の日、という言葉を与えるにはなんともしっくりこない。アタシの父親は確かにアタシの父親なんだけど、5歳くらいから一緒に住んでないわりには、アタシが大人になってからはクラブに行けばばったり会ったりすることもあって、なんていうか、いつも様子を気にかけてくれる近所の悪くてイケてるおっさん、って感じだ。頻繁に会うわけではないし会話するわけではないけれど、会えば絶対に良くしてくれるような関係性。だからと言ったらアレだけど、父の日に何かをプレゼントした記憶はまったくないし、おそらくこれからも父の日に何かをあげることはないと思う。

 でもその代わりに、父親に何かをプレゼントしたい、とアタシは常に思っている。たぶんアタシだけじゃなくて父親を取り巻く夜遊び好きなひとたちも、父親にタイミングがあれば何かをあげたいと思ってるかもしれない。お金がないのに人に酒をおごりまくったりプレゼントをあげたりしてるせいで今となってはついにクレジットカードさえ持つことの出来なくなった父親の、人をもてなそうとする意気込みは類を見ないほどかなり気合いが入っている。身内としては苦しいけれど、それでも彼はあれでいいのだ、と大人になるにつれて自分で金を稼げる年齢になるにつれて、少しづつだけど彼を許せるような気持ちになった。

 小さい頃の貧乏は両親のせいだからとずっと彼らを呪っていたけれど、成人したアタシが未だにあまり金を持っていないのは完全に自分のせいだから、と自分に言い聞かせる。いま手持ちの金がなくなったら住む家も飯もないという人生のバックアップがまったくないままアタシや両親の生活は進んでいる。家族全員、あるのは借金だけで貯金もないし保険も入ってないし年金も払っていない。金がなくなったらその時は死ねばいいよねー、と半分泣き笑いのように言うことはあるけれど、本当はもう少しアタシに金ができたら父親に金をプレゼントしたいと思う。金をプレゼントって言葉はなんだか胡散臭いし妙な響きだけど、そのことがいつも頭の中央でガンガンと響いている。そしてアタシは仕事をする。やりたい仕事も、やりたくない人に言えないような仕事も、全部なんでもする。そうじゃないと、金なんてプレゼントできるようにならないからだ。

 今は金にならない(飯代にも家賃代にもならないよくわかんないプレゼント、花とかハンカチとかさ、あるじゃんそうゆうの)をあげるよりは金をあげたいくらい彼の生活は切羽詰まっているけれど、いつか酒をおごる、みたいなレベルで金を日常的にプレゼントできるようになったら、やっと父の日のことを考えたい。そしてその時には、父の日くらいはいわゆるプレゼントらしいものをあげてみたい。例えば父親がかつて集めていた大好きなZippoライターとかスウォッチの時計とか、あるいは低音が綺麗に響くスピーカー、あとはなんだろうな、いつも派手なカワイイ柄シャツを着てるから、マックイーンとかイヴサンローランの柄シャツなんかもあげることが出来たら最高だろうな。

 アタシの父は、父の日には完全に相応しくないけれど確かにアタシの父ではあり、こうしてアタシが文章を書いたり映像を撮ったりなによりも音楽が好きなのは紛れもなく父親の影響だから、いつかそうゆうことで稼いだ金を父親に還元できたらきっとおもしろいと思う。そしてその時には、夜を超えて朝を超えて昼を超えてまた夜がやってくるまで、二人してイケてる柄シャツを着て東京中のクラブをハシゴして酒を飲み続けるのだ。そしていつかお互いの友達合わせて1万人呼んで、巨大なパーティーを一緒にしましょう。

UMMMI.(うみ)

アーティスト/映像作家。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとノンフィクションを混ぜて作品制作をしている。初長編映画『ガーデンアパート』、東京藝大学の卒業制作『忘却の先駆者』がロッテルダム国際映画祭に選出(2019)。また、英BBCテレビ放映作品『狂気の管理人』(2019)を監督。現代芸術振興財団CAF賞 岩渕貞哉(美術手帖編集長)賞受賞 (2016)。イメージフォーラムフェスティバルヤングパースペクティブ入選(2016)、ポンピドゥーセンター公式映像フェスティバルオールピスト東京入選(2014)など。 http://www.ummmi.net/

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