ふと、ギフト。パルコふと、ギフト。パルコ

ふとした時にあなたを想うわたしです。PARCO GIFTふとした時にあなたを想うわたしです。PARCO GIFT

出産祝い|ふと、ギフト。パルコ|PARCO GIFT出産祝い|ふと、ギフト。パルコ|PARCO GIFT

COLUMN

いつかの携帯の待ち受け画面に捧げる

仲のいい友だちの誰かに子供ができたらいつもあげたいと思ってるものがある。どこかの道端を歩いてるときに見かけたやつで、赤ちゃん用の服なんだけど、真ん中にパンクバンドBlack Flagのロゴが入ってて、色は真っ黒なの。赤ちゃんにあんまり馴染みがないからよくわからないんだけど、たぶん生まれてすぐくらいのときに着せるつなぎ?みたいなやつ。百貨店とかでよく見るやつはピンクとかブルーとか淡い色が多いイメージだったから、パンクバンドのロゴが入った真っ黒な赤ちゃんの洋服を見つけた時はちょっと興奮した。確かに、すべての親がいわゆる赤ちゃんっぽいものを望んでるわけないよね、パンクス赤ちゃんがいてもいいよねーと思って、それを見たときは大げさだけどアタシみたいな常識のないクズもいつか子どもが産めるかもしれないと思った。洋服に文字通り救われる、というのはいつだってこうゆうタイミングだ。

アタシの周りで子供を産んだ近い友達がまだいないから残念ながら具体的な誰かにあげたことはないんだけど、きっと大好きな友達の子供の出産を祝うのは最高だろうな。アタシはその子の生まれた瞬間から思春期になってもずっと親の友達の変でイかれた姉さんとして認識されるんだ。出産祝いにあげたBlack flagの服を着せてその赤ちゃんを大判のフィルムカメラでスタジオで撮ったりして、その子が思春期になって嫌がってもその写真をオラオラって見せ続けるの。色んなパンクバンドをしつこく聴かせるし、変なB級映画も教えるし、ちょっとだけ年齢を気にしながらエッチなこともたくさん教えちゃう。

その子はそんなアタシを鬱陶しく感じながら、親に言えないことができたとき、申し訳なさそうにアタシのところに初めてモジモジしてやってきて、秘密のはなしを相談するんだ。そしたらアタシはゲラゲラ笑って、そんなこと自分で考えろよって言いながら、コンビニで発泡酒じゃなくてちょっといいビールを買って、真剣な眼差しをしてるその子とビールを一口づつ分け合って飲むんだ。アタシはその子の話を黙って聞いて、肩を組んで、何も言わない。アドバイスなんてきっとたくさん出来るんだろうけど、人生のしんどい時、人は自分ひとりぼっちでその乗り越える方法を見つけたほうがうんと成長できると思ってるから。アタシみたいなティーンを乗り越えた女がするべきことは、笑ったり酒飲んだりしながら黙って話を聞いて、強すぎる圧力でバシバシ背中を叩くだけなんだ。

それで、その子がコンビニのトイレに行ってる間にアタシは自分の携帯の待ち受け画面を、出産祝いにあげたBlack flagの服を着てるいつかの例の写真、アタシが大判で撮ったいま目の前にいる子どもがもっともっと子どもだった時に撮った写真にさらっとすりかえる。それでちょっと酔っ払って帰ってきたその子に、ねえ見てよこれアタシの携帯の待ち受け、アンタも昔は可愛い子どもだったのにねー、気づいたらなんだかアタシたちは大人になってしまうし、人生はめっちゃややこしくてしんどいこともあるよねーって言いながら、アタシは気持ち悪くでへへって笑うよ。その子にはますます気持ち悪い姉さんだなって思われちゃうね。でもそれでいいんだ。気持ち悪くても人生それなりにたのしく生きてゆけるんだ、アタシが実証人になってあげる。それでその子の話を存分に聞いて(コンビニだけど)飲みたいもの欲しいものを今日だけは存分に買ってあげて、それで、一曲だけその時のムードに合った曲を流すんだ。アタシたちはその曲を、コンビニ前に座り込んで無言で一緒に聴くの。曲が終わって、その帰り道に、アタシのこと好きになるなよーとか言いながら、はあ?そもそもアタシは女だし海ちゃんみたいなババアなんて興味ないしとか悪態つかれながら、アタシはこう返す。「もし金が必要になったらいつでも言ってね、3万円までだよ。しんどくなったら3回まで連絡していいよ、1年に3回までね。」とかいいながら、コンビニの姉さんに一瞬ペンを借りてその子の腕にでっかく汚く3って謎の数字の落書きをするんだ。

それで家に帰ったらその子の親、つまりアタシの昔からの友達に腕のらくがきを見られて、アンタ一体どんな子と遊んでるのよーとか言って呆れちゃうの。それでその子の親がアタシと飲んだときに、この間子どもが腕に落書きまみれで帰ってきてねーとか愚痴られて、アタシはまた気持ち悪くでへへって笑いながら、ウケるそんなことなんてあるのー、意味わかんないねー、でも意味わかんないのって最高じゃん子どもなんていてもいなくても別にいいけど、なんかよくわかんないけど子どもいるのって狂ってていいねーとか適当なことを言って、友達と出会ったかつてアタシたちが10代だった時から一切変わることなく美味しい酒を一緒にひたすら飲むんだっ。

UMMMI.(うみ)

アーティスト/映像作家。愛、ジェンダー、個人史と社会を主なテーマに、フィクションとノンフィクションを混ぜて作品制作をしている。初長編映画『ガーデンアパート』、東京藝大学の卒業制作『忘却の先駆者』がロッテルダム国際映画祭に選出(2019)。また、英BBCテレビ放映作品『狂気の管理人』(2019)を監督。現代芸術振興財団CAF賞 岩渕貞哉(美術手帖編集長)賞受賞 (2016)。イメージフォーラムフェスティバルヤングパースペクティブ入選(2016)、ポンピドゥーセンター公式映像フェスティバルオールピスト東京入選(2014)など。http://www.ummmi.net/

RECOMMEND GIFT RECOMMEND GIFT